ビーズ(株)のカスタマーサポートはどのように ”NPS”を運用しているのか?

 徐々に認知度も上がっていてご存知の方も多いかと思いますが、顧客ロイヤルティを測定する指標として「NPS」というものがあります。

ビーズ株式会社のカスタマーサポート部門『Vcas』においても、そのNPSを活用しています。


INDEX
  1. なぜNPSを指標としているのか?
  2. ちょっと変わったNPSの運用方法
  3. NPSの運用開始後の変化
  4. 最後に




なぜNPSを指標としているのか?

カスタマーサポートのお仕事において、お客様からいただく「ありがとう」の言葉はとても励みになるものであり、やりがいになります。
しかしながら、ビジネスである以上、「会社の利益に貢献できているのか」という点は重要な要素です。
その観点から、これまで顧客対応品質の指標として利用してきた"CSAT(顧客満足度)"ではなく、 "NPS(顧客推奨度)" を採用しています。
NPSは「家族や知人に●●をすすめたいと思いますか?」という質問を通して、「他者にすすめる」という未来の行動を点数化する指標のため、より業績成長との相関が強いと言われています。
また、「顧客ロイヤルティを高めることでコアなファン(リピーター)を増やし、LTV(「Life Time Value」=顧客生涯価値)を向上させ、
これを以て企業価値やブランド価値を成長させる」という私たちの部署が掲げる目標にもフィットする指標であり、私たちVcasにとって最適なものでした。

ちょっと変わったNPSの運用方法

 
まず調査範囲ですが、Vcasでは企業やブランドに対する全体的なスコア(リレーションシップNPS)ではなく、顧客対応に限定したスコア(トランザクショナルNPS)を取得しています。
 
ここまでは一般的ですが、設問内容が一風変わっています。
 
通常であれば、「自社のことを家族や知人にすすめたいと思いますか?」といった設問に対して「0~10」の11段階で回答いただきますが、
 
Vcasでは「あなたは当社商品を家族や知人にお薦めしたいと思いますか?また、それは当社サポートへの問い合わせ前と後で、どう変化しましたか?」という形式です。
 ※ アンケートの一部抜粋

 
狙いとしては、サポート問い合わせの前と後でのスコアの差異が生じた顧客評価が、「価格や品質等の要素によるもの」ではなく「われわれのカスタマー対応」による変化であるのかを区別できればそれに越したことはありませんが、
 
極力その影響に近いデータを収集したいと考えています。
 
「品質には満足しているが顧客対応に不満がある」や、「品質や製品そのものは期待どおりのものではなかったが、顧客対応には満足している」等の自由記入欄のご意見を収集することで、
 
それが「われわれのカスタマー対応」による影響であるのかをある程度ふるいにかけることも可能となります。
 
※ 時には、ユーザーローカルによるテキストマイニングを使用して関連を調査することも行っています。

 
また、このアンケートにて結果のスコアだけを取得しても、前提となるベースの指標がないため、サポート体験を経由したことでどの程度スコアに変化があるのかを比較測定ができません。
 
この理由は調査範囲を顧客対応品質に限定していることにも繋がりますが、私たちのビジネスモデルでは、顧客ごとの購買行動を追跡することが困難である点にあります。
 
つまりNPSとLTVの相関を確認することが出来ない、というのが現状です。
 
本来であれば、
 
1.当社やブランドに対するトータルのNPSを取得
 
2.1に対する、カスタマーサポートのスコアとの相関を調査
 
3.2に対するトランザクショナル調査によって、重視すべき課題を調査
 
などを踏まえ、測定や課題立案をするところではありますが、
 
「だれが、いつ、なにを、どれくらい購入しているか」といった前提となる関連データの取得が出来ない状況を受け、目的を以下に絞り運用することにしました。

 
・カスタマーサポートを提供する前後でのブランド推奨度のスコアリング
 
・「対応スピード」や「言葉の丁寧さ」など、各要素別の対応品質のスコアリング
 
・オペレーター別の影響度のスコアリング
 
・顧客対応品質の高低に対する人事考課への上記スコアリングの反映

余談とはなりますが、顧客行動を可視化しやすいビジネス以外でカスタマーサクセスが浸透しにくい理由は、先述したように「関連データ」の取得が困難なため、自社ビジネスの成長とNPSの相関をスコアリングできない点にあると考えていています。
ここは当社でも課題であり、有効なデータ集計や分析の手法については現在も模索中です。

NPSの運用を始めてからの変化

オペレーター別のNPSがスコアリングされたことで、現在ではNPS(対応品質)を人事考課に反映させています。
これにより、スピーディに対応処理することが目的化してしまう状況が緩和され、つまり顧客対応スピード偏重ではなく、対応品質の要素をバランスよく人事考課に反映させることができるようになりました。
また、「対応スピード」や「言葉の丁寧さ」などのスコアもオペレーター別に定量化され、各個人の強みや弱み、課題が把握できるようになったことで、対応品質を向上させるための意見交換や勉強会などの開催も活発になってきています。
他には、従業員エンゲージメントの指標である「eNPS」が全社的に導入されるなど、Vcasの部署内だけではなく、この考え方が全体へ波及するようになりました。
これは、まさにトップダウンではなくボトムアップとして「corporate culture:企業文化」が広まっていったものであり、大きな変化であると考えています。

最後に

現在、Vcasでは幸いなことに人材が定着するようになってきており、それに伴いNPSの数値は上昇トレンドを継続しています。
商品や応対の知識が徐々に蓄積できていることが要因と推測していますが、「人材が定着することに伴う効果」を推量する材料ができ、仮説とは言えそれを推進するメリットを取得できたことはとても意義深いと感じています。
これまで記載したように、目的の設定や運用次第で、NPSは収益との相関を算出すること以外にも価値をもたらすことができます。
NPSの使い方としては亜流ですが、あくまでも「達成したい状態」を促すための手段として捉えれば、アイデア次第で色々な運用方法があって良いと思いますので、この記事をご覧のみなさまにとって、少しでも気づきや参考になれば幸いです。